大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 平成6年(行ツ)162号 判決 1995年6月08日

上告人

春日寛

右訴訟代理人弁護士

程島弘美

被上告人

東京都選挙管理委員会

右代表者委員長

新井一男

右指定代理人

石川利夫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人程島弘美の上告理由について

一  選挙権の平等と選挙制度

1  法の下の平等を保障した憲法一四条一項の規定は、国会の両議院の議員を選挙する国民固有の権利につき、選挙人資格における差別の禁止にとどまらず(四四条ただし書)、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等をも要求するものと解すべきである。

しかしながら、憲法は、国会の両議院の議員を選挙する制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量にゆだねているのであって(四三条、四七条)、投票価値の平等は、右選挙制度の決定のための唯一、絶対の基準というべきではなく、原則として、国会が具体的な選挙制度の決定に当たって正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものである。

2  平成六年法律第二号による改正前の公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度としていわゆる中選挙区単記投票制を採用していた。この制度の下において、選挙区割と議員定数の配分を決定するについては、選挙人数又は人口と配分議員数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準であるというべきであるが、それ以外にも考慮されるべきものとして、都道府県、市町村等の行政区画、地理的状況等があり、また、人口の都市集中化の現象等の社会情勢の変化を選挙区割や議員定数の配分にどのように反映させるかという点も考慮され得べき要素の一つである。このように、選挙区割と議員定数の配分の具体的決定に当たっては、種々の政策的及び技術的考慮要素があり、これらをどのように考慮して具体的決定に反映させるかについて客観的基準が存在するものでもないから、議員定数配分規定の合憲性は、結局は、国会が具体的に定めたところがその裁量権の合理的行使として是認されるかどうかによって決するほかはない。

右の見地に立って考えても、具体的に決定された選挙区割と議員定数の配分の下における選挙人の投票の有する価値に不平等が存在し、あるいはその後の人口の異動により右のような不平等が生じ、それが国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお、一般に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、右のような不平等は、もはや国会の裁量権の合理的行使の限界を超えているものと推定され、これを正当化すべき特別の理由が示されない限り、憲法の選挙権の平等の要求に反している状態であると判断されざるを得ないものというべきである。

3  以上は、最高裁昭和四九年(行ツ)第七五号同五一年四月一四日大法廷判決(民集三〇巻三号二二三頁。以下「昭和五一年大法廷判決」という。)、最高裁昭和五六年(行ツ)第五七号同五八年一一月七日大法廷判決(民集三七巻九号一二四三頁。以下「昭和五八年大法廷判決」という。)、最高裁昭和五九年(行ツ)第三三九号同六〇年七月一七日大法廷判決(民集三九巻五号一一〇〇頁。以下「昭和六〇年大法廷判決」という。)及び最高裁平成三年(行ツ)第一一一号同五年一月二〇日大法廷判決(民集四七巻一号六七頁。以下「平成五年大法廷判決」という。)の趣旨とするところである。

二  本件議員定数配分規定の合憲性

1  平成五年七月一八日に施行された第四〇回衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)は、平成四年法律第九七号(以下「平成四年改正法」という。)により改正された公職選挙法の衆議院議員定数配分規定(同法一三条一項、同法別表第一、同法附則七ないし一一項。以下「本件議員定数配分規定」という。)に依拠したものであるが、本件選挙の施行当時、本件議員定数配分規定の下における選挙区間の議員一人当たりの選挙人数の較差は、最大1(愛媛県第三区)対2.82(東京都第七区)となっている(以下「本件最大較差」という。なお、較差に関する数値は、すべて概数である。)。ところで、平成四年改正法による改正前の公職選挙法の衆議院議員定数配分規定によって最後に行われた平成二年二月一八日施行の衆議院議員総選挙当時における右選挙人数の較差は最大1対3.18であり、これに対しては、平成五年大法廷判決において、憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至っていたものであるとの判断が示されており、また、その後の平成二年一〇月に実施された国勢調査によれば、選挙区間の議員一人当たりの人口の較差は最大1対3.38に拡大するに至った。国会は、第一二五回国会において、議員一人当たりの較差が特に著しい選挙区について、定数の増員、減員及び選挙区の区域の変更を行う等のいわゆる九増一〇減等を内容とする平成四年改正法を成立させるに至ったのであり、この改正の結果、本件議員定数配分規定の下において、右平成二年の国勢調査による人口に基づく右較差は最大1対2.77となり、そして、本件選挙当時には本件最大較差(1対2.82)を生ずるに至ったものである。以上の事実は、原審の適法に確定するところである。

2 右の原審の適法に確定したところによれば、本件選挙の施行当時、右較差が示すような選挙区間の投票価値の不平等が存在するが、これは、平成四年改正法の成立に至るまでの経緯に照らせば、選挙人数又は人口と配分議員数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準とされる衆議院議員の選挙制度の下で、国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお、一般に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているとまではいうことができず、そうすると、本件議員定数配分規定は憲法の選挙権の平等の要求に反するものではない。

以上のように解すべきことは、昭和五八年大法廷判決及び昭和六〇年大法廷判決が、昭和五〇年法律第六三号による公職選挙法の改正の結果、昭和四五年一〇月実施の国勢調査による人口に基づく較差が最大1対4.83から最大1対2.92に縮小することとなったこと等を理由として、昭和五一年大法廷判決により違憲と判断された右改正前の議員定数配分規定の下における投票価値の不平等状態は右改正により解消されたものと評価することができる旨を判示し、また、平成五年大法廷判決が、昭和六一年法律第六七号による公職選挙法の改正の結果、昭和六〇年一〇月実施の国勢調査による人口に基づく較差が最大1対2.99となり、その後、昭和六一年七月六日施行の衆議院議員選挙当時の右選挙人数の較差が最大1対2.92となったこと等を理由として、昭和六〇年大法廷判決によって違憲と判断された右改正前の議員定数配分規定の下における投票価値の不平等状態は右改正により解消されたものと評価することができる旨を判示した趣旨に徴して、明らかであるというべきである。

以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨はすべて採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官高橋久子、同遠藤光男の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官高橋久子、同遠藤光男の反対意見は、次のとおりである。

私たちは、本件選挙の施行当時において本件議員定数配分規定が憲法の選挙権の平等の要求に反するものではないとする多数意見に賛成することはできない。その理由は、次のとおりである。

憲法一四条一項は投票価値の平等を要求しているが、投票価値の平等は、選挙制度決定のための唯一、絶対の基準ではなく、他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであること、いわゆる中選挙区単記投票制の下においては、選挙区割と議員定数の配分を決定するについて選挙人数又は人口と配分議員数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準であるが、それ以外にも考慮されるべき要素があり、議員定数配分規定の合憲性は、国会が具体的に定めたところがその裁量権の合理的行使として是認されるかどうかによって決すべきものであること、投票価値の不平等が、国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお、一般に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、右のような不平等は、これを正当化すべき特別の理由が示されない限り、憲法の選挙権の平等の要求に反している状態であると判断すべきであることについては、私たちも多数意見に同調するものであり、意見を異にするものではない。

しかしながら、多数意見が、右のような考え方に立ちながら、本件最大較差(1対2.82)が示す投票価値の不平等が憲法の要求に反するものではないとした点には、賛成することができない。

代議制民主主義体制を採る憲法の下においては、代議員たる国会議員を選出するための投票権が平等に与えられ、かつ、これを自由に行使し得ることが必要不可欠の要請というべきである。このように考える以上、具体的な選挙制度の決定に当たっては、投票価値の平等こそが、何より重要視されるべきであり、他の要素、つまり政策的目的ないし理由との関連において考慮されるべき非人口的要素は、あくまでもこれを補正するためのものにすぎないのであるから、この種の非人口的要素を投票価値の平等以上に重視することは許されないといわなければならない。すなわち、選挙区割と議員定数を決定するについて、厳格に前記比率の平等の原則を貫き、選挙区間の議員一人当たりの選挙人数又は人口の較差を一対一ないし実質的にこれと同視すべき範囲内にとどめるべきであるとまではいえないが、右較差が一対二を著しく超えることになれば、実質的にみて、投票価値平等の要請よりも、むしろ非人口的要素を重視したことにほかならないことになる。したがって、これによる補正は、右較差が一対二ないしこれに限りなく近い数値にとどまることを限界としてのみ考慮することが許容されるにすぎないと解すべきである。

ところで、公職選挙法制定後の最大較差の推移をみると、昭和二五年四月の制定当時には1対1.51であったものが、昭和三五年一〇月の国勢調査の時点では1対3.21に拡大し、昭和三九年七月の同法改正により1対2.19にまで縮小されたものの、その後の国勢調査時、総選挙施行時、同法改正時のいずれを取ってみても、これを下回ったことはないのみならず、平成四年一二月の同法改正により1対2.77になったのが最も小さい数値であって、その較差が一対五程度に及んだ時期もあり、本件選挙当時には1対2.82になっていたものである。したがって、昭和三九年七月の改正時の1対2.19という較差は、一対二に極めて近いものであって、必ずしもこれを違憲と断定し得るものとは考えないが、その後の較差は、いずれも一対二をはるかに超えるものであって、到底憲法の要求を満たしているとは考えられないものである。

また、平成六年法律第二号による改正前の公職選挙法別表第一が、五年ごとに直近に行われた国勢調査の結果によって同表を更正するのを例とすると定めていたにもかかわらず、較差是正のための改正は、前記昭和三九年の改正後、昭和五〇年七月、昭和六一年五月及び平成四年一二月に行われたにとどまり、国会がその責務を十分に果たしてきたものとはいい難い。

これらの諸点にかんがみると、本件選挙当時における本件最大較差(1対2.82)は、私たちの考える前記限界をはるかに超えるものであり、したがって、憲法の選挙権の平等の要求に反する状態にあったと判断せざるを得ない。また、このような状態が少なくとも三〇年近くの長きにわたって継続していたのであるから、国会に認められた是正のための合理的期間をはるかに超えていたことは明らかであり、本件定数配分規定は憲法に違反するものであったというべきである。

以上のように、本件議員定数配分規定は違憲であるが、これに基づいて行われた本件選挙の効力を直ちに無効とすべきものではない。本件選挙の効力を否定しないことによる弊害、本件選挙を無効とする判決の結果一時的にせよ憲法の予定しない事態が現出することによってもたらされる不都合、その他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、本件は、いわゆる事情判決の制度(行政事件訴訟法三一条一項)の基礎に存するものと解すべき一般的な法の基本原則を適用して、本件選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避すべき場合に当たるものと考えられる。したがって、本件においては、主文においてその違法を宣言するにとどめ、本件選挙を無効としないこととするのが相当であると考える。

(裁判長裁判官高橋久子 裁判官大堀誠一 裁判官小野幹雄 裁判官三好達 裁判官遠藤光男)

上告代理人程島弘美の上告理由

一 原判決の内容

1 まず、原判決は定数配分規定についての基準を較差一対二未満とすべき旨述べている。

即ち、原判決は「衆議院議員の定数を、人口以外の他の要素をも考慮して配分するとしても、選挙権として一人に二人分以上のものが与えられることがないという基本的な平等原則をできる限り遵守すべきものであって、このことは、議員定数の配分をめぐる世論の等しく指摘するところであるばかりでなく、これまでの公選法の議員定数の改正をいずれも緊急措置あるいは当分の間の暫定措置であるとして、その抜本改正を必要としてきた国会自身の認識でもあったといえる。」(19頁)と述べている。

2 また、原判決は、結論的には一対二未満の基準を採るべきとしながらも、本件経過の下で本件議員定数配分規定は暫定的なものであり、直ちに違憲とはいえないとする。

即ち、原判決は、「議員定数の配分の本来のあり方及びこの問題が取り上げられるようになってからすでに相当の期間を経ようとしている現状を考慮すると、当裁判所としては、最高裁判所がこの問題について前記のような判断(憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至らない限度を一対三未満とする基準と考えられる)を従前示していたことからして、国会がこれを参考にして前記…のような経過の下で暫定的に立法した本件議員定数配分規定を直ちに違憲とすることは相当とはいえないものの、今後速やかに実現すべき選挙制度の抜本改正における定数配分についても、これまでのような基準で違憲判断をするのが相当であるとはいえず、基本的には前記のような世論及び国会自身の認識に即した基準(一対二未満と考えられる)によるべきものと考える。」(20頁)と述べている。

3 そして、原判決は、暫定措置であると認定する理由として、「昭和六一年改正の際に行われた前記の定数是正に関する決議は、衆議院が立法府としての立場で自らの適切妥当な立法権の行使についての決意を表明したものであり、重い政治的意味を有するというべきであるが、…平成四年改正までの経過と、議員定数の配分が複雑多様な考慮要素と影響をもつという事柄の性質に照らして考えると、昭和六一年の改正から平成四年改正に至るまでの間の国会の対応が、先の定数是正に関する決議を無視して抜本改正の検討を怠りこれを放置してきたとまで断じるのは、当を得ないというべきである。右の事情の下では、国会が今後さらに抜本改正のための検討を続けることを前提として、当面違憲状態とされるまでに拡大した較差の現状を是正するための暫定措置を講じることとしたことをもって、立法裁量権の行使として是認する余地のない不合理なものであるということはできない。」(17頁)と述べている。

二 原判決の憲法違背の内容について

1 まず第一に、我が憲法の要請する最大限の選挙権の平等を保障するためには、原判決の基準(右第一項1)は妥当でない。

そもそも、現時点で採り得る方法の中で、最も選挙権の平等を保障する定数配分をし、全選挙区の国民に可能な限りの平等を保障することは、憲法の要請であり、これは国民主権、代表民主主義と直結する重大問題なのである。また、選挙権行使が、個人の尊厳(日本国憲法第一三条)に基づく政治的自己実現の最たるものであることからも、選挙権平等の問題は極めて重要である。とすれば、「基準人数に一議員を保障する」上告人主張の「基準人数論」は、全ての選挙区の国民に現時点における最大限の選挙権の平等を保障する方法として、まさに憲法原則と言えるのである。

確かに、一人に二人分以上の選挙権を与えないとする定数較差「一対二の基準」は、従前の理論の中ではかなり選挙権の平等を図り得るものであった。しかし、コンピューター技術の発達した今日においては、右「一対二の基準」よりさらに進んで最も選挙権の平等を図る「基準人数論」という方法が容易に採り得るのである。とすれば、最も選挙権の平等を図る方法を選択することは我が憲法の要請である。

従って、我が憲法の要請する最大限の選挙権の平等を保障する方法を採らず、より緩やかな一対二の基準を採用すべきとする原判決には、憲法違背がある。

なお、最高裁判所にあっては、「一対三の基準」(一対三未満であれば合憲)を採用しているものと解されるが、右基準は「選挙権の平等を最大限に保障する」憲法の要請に反する。即ち、上告人主張の基準こそが「選挙権の平等を最大限に保障する」のであり、これより選挙権の平等の保障程度が少し低いのが一対二の基準で、選挙権の平等を保障した程度が三者の中で最も低いのが一対三の基準なのである。とすれば、選挙権の平等を保障する我が憲法の下で一対三の基準を採用することは到底できないのである。

2 第二に、仮に我が憲法が右一対二の基準まで許容するとしても、原判決は本件議員定数配分規定を合憲とする点で憲法違背があると言うべきである。

原判決は、第一項3のように本件議員定数配分規定は暫定的なものであるから、同規定には一対二の基準を採用しなくていいので合憲であるとする。

しかしながら、昭和六一年法改正のときに定数是正に関する抜本是正の決議があるのに、平成四年末の段階に至ってさえ「暫定的な是正」で済ませることが許されるのであろうか。

思うに、選挙権は国民主権に直結する極めて重要な権利であり、民主主義を実現する権利である。そして、我が憲法が可能な限り民意を国政に反映させることを要請し、これを受けて民主主義実現のために国会自ら抜本的改正を国民に表明していたのである。それにも拘らず、六年余りもの間抜本改正を怠っていたのちの平成四年一二月に「暫定的措置」なるものが許されると解すべきではない。仮に憲法の番人たる裁判所が「緊急措置あるいは当分の間の暫定措置」の繰り返しを許すのであれば、それは形式的には暫定措置であるとしても、実質的にはもはや暫定措置ではなくなり、国民の願いである抜本的改正はいつになっても実現し得ないのである。

従って、仮に我が憲法が右一対二の基準の採用までも許容するとしても、原判決が本件規定を「暫定措置」と認定し、それ故に一対二の基準を満たさずとも合憲であるとした点には、憲法違背があると言うべきなのである。

三 選挙権の平等を最大限に保障する方法について

上告人が本件訴訟で主張するのは、区割りされていることを前提に「選挙権の平等を最大限に保障する」方法(「基準人数論」)を採用すべきであるということである。そして、「基準人数論」自体はともかく、右のような考え方自体は小選挙区制でも当てはまる。即ち、たとえ中選挙区制から小選挙区制ないし小選挙区比例代表並立性に制度が変化しても、その時点において採り得る方法の中で「選挙権の平等を最大限に保障する」方法を常に追求していくのが上告人の考え方なのである。小選挙区制の場合であれば、区割り段階でコンピューター等を用いて「選挙権の平等を最大限に保障する」方法を追求して行くこととなろう。

裁判所は、選挙権の平等を図る最後の砦である。とすれば、裁判所は「選挙権の平等を最大限に保障する」方法について、その時点で採用可能で、しかもその採用が容易である場合、かかる選挙権の平等を最大限に保障する方法を採用すべきことを我が憲法が要請している旨明言すべきである。これによって、憲法の番人たる裁判所が主権者である国民の期待及び我が憲法の期待に正面から答えることになるのである。

選挙方法の選択については様々な要素も絡んでくることから、常に特定の一つの方法が良いとは言えず、「選挙権の平等を最大限に保障する」方法も、そのときどきで変るかもしれない。しかし、どんな選挙制度を選択しようと、採り得る方法(しかもその採用が容易であって)のなかで「選挙権の平等を最大限に保障する」方法が存在するのであれば、その方法を採用すべきは当然のことなのである。

以上のようなことから、本件議員定数配分規定は、違憲と言わざるを得ないのである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例